フェデラル・ファンズ市場と貨幣節約
1951年の財務省と連邦準備のアコード以降,連邦準備は加盟銀行の国債の売却を最小限に抑え,加盟銀行の自由準備はしばしばマイナスに転じている。商業銀行は流動性の問題にたいして本格的に取り組まざるをえなくなり,フェデラル・ファンズ(加盟銀行の連邦準備銀行預け金,以下FF)市場が1951年アコード後に再導入されている。
その後,国債の大量発行によってインフレーションの進行した1960年代から,短期金融市場が急速に拡大し,FF市場は全米市場にまで発達している。1960年代の短期金融市場の拡大は,商業銀行の負債管理の発達として説明されている。銀行は,バランスシートの負債側において短期資金の取入れ,負債管理を導入している。すなわち,銀行は,FFやユーロダラーを取り入れたり,RP(買戻し条件付き証券売買),CD(譲渡可能定期預金証書),銀行関連コマーシャル・ペーパーによってFF等の短期資金を取り入れるのである。
こうした現代の短期金融市場を取り巻く金融構造は,古典的なものから遠く隔たっている。第1に,商業銀行が商業手形の割引による商業貸出から離れて,満期1年以上のターム・ローン,モーゲイジ貸付,消費者貸付の各部面に進出して中長期の貸出をおこなっている。第2に,巨大な証券市場,とくに国債市場が発達している。1920年代にはFFは銀行の一時的な準備金の過不足の調整に限定されていたが,こうした金融構造のなかでは短期金融市場も古典的なものから変化せざるをえない。
周知のように,アメリカの商業銀行は当初から商業貸出以外の貸出をおこない証券市場で流動性を維持していた。商業貸出の自己流動的性格にたいする転嫁流動性である。この転嫁流動性は,1940−50年代には巨大な国債市場において銀行が国債を売却し資産を組み替えることによって貸出を増加させる資産管理へと変化していった。そして,短期金融市場がアメリカにおいて急速に拡大していくのは,1960年代における銀行の負債管理の時代である。このとき,FFは,国債流通市場において決済手段として使われるようになっているのである。これは,古典的な短期金融市場ではなく,管理通貨制における短期金融市場の新たな機能である。こうした決済手段としてのFFの機能は,その後1970−80年代の国債のブック・エントリー・システムや政府証券の清算会社GSCCにも受け継がれていったのである。