リチャード・ドーキンス著『ブラインド・ウォッチメイカー(上・下)』早川書房,1993年。

著者はノーベル賞確実といわれるオックスフォードの動物行動学者。第1作『利己的な遺伝子』(紀伊國屋書店)で生物=生存機械論を展開し世界的な注目を浴びる。ちなみにベストセラーを記録した『利己的な遺伝子』とは『高校教師』第1話で生物学研究室を追い出される真田広之が線路に落としたあの本である。

さて,書名の邦訳 は「盲目の時計職人」である。18世紀の神学者ペイリーは精巧な時計を作る時計職人のように複雑な生物を創造した神が存在すると考えた。ダーウィン主義擁護の著者は時計職人は自然界に存在し,進化における自然淘汰こそが盲目の時計職人だと主張する。盲目とは自然淘汰には特 定の見通し,目的がないことを意味する。しかし,自然淘汰の結果はまるで腕のいい時計職人によって作られたかのような形と機能をもつ。この逆説をコンピュータを駆使して解き明かす。ダーウィン進化論の理論的到達点を示す好著。(〜新刊あれコレ〜『むっく』321995年)

 

本川達雄著『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学中公新書,1992年。

著者はここ数年テレビ等で売れっ子の東工大教授。ナマコの研究をしていて講義で歌を歌うおじさんです。大きな動物ほど寿命は長いが動作はのろく,小さな動物ほど寿命は短いが機敏に動きます。これはゾウもネズミも(ヒトも)その一生に心臓が打つ回数,呼吸の回数が 同じことを表しているのです。そうすると様々な動物たちは異なった速さの時間で生きていると考えられます。この時間を決定するのが体の大きさ=サイズなのです。660円(〜こんな本,あんな本,どんな本〜『むっく』331996年)