シカゴ郊外にいたときに,有名なフランク・ロイド・ライトの建築した住宅群オーク・パークを訪ねてみました。F・L・ライトは旧帝国ホテルを設計したのでご存知の方も多いと思います。

ライトの建築は時期によって幾つかの特徴があるのですが,気が付いたのは格子縞というか障子の桟のようなデザインです。ライトの初めての海外旅行は日本で,安藤広重を中心に浮世絵を収集したといいいます。そのため,日本建築の影響を受けているようです。

建築家F・L・ライトは波乱万丈の人生を送っています。若い頃は困難の連続で,両親の離婚や大学中退を経験しています。当時,アメリカの有能な建築家が与えられたパリへの留学の機会にも恵まれませんでした。

建築事務所を独立してから一九一〇年までは,第一黄金時代と呼ばれています。このとき先のオーク・パークに住み,そこに特徴のある住宅群を残しています。この第一黄金時代に,ヨーロッパの代わりに,日本に来ることになったのです。この日本旅行が当時のアメリカの建築家とは異なった色彩をライトに与えたようです。ちなみに,オーク・パークはアメリカの文豪ヘミングウェイが少年時代を過ごした町としても有名です。

この第一黄金時代はやがて終わりを迎えます。ライトが施主の妻とヨーロッパに逃避してしまったのです。ライトは何度も再婚していますが,相手はいつも施主の妻でした。世界一美しいホテルといわれた日本の旧帝国ホテルも,黄金期の地位から転げ落ちた不毛の時代の作品です。

不毛の時代は四半世紀も続き,一九三六年にライトの最高傑作である落水荘の成功で第二黄金時代が始まりました。ニューヨークのグッゲンハイム美術館もこの時期に設計され,ライトの没後に完成しました。

ライトの建築は,自然と建築との共存が一貫したテーマでした。これはライトの生まれ育ったアメリカ中西部の大草原と影響を受けた日本建築から育まれた発想だったようです。