要 旨:
本稿では,ローン・セール,金利スワップ,クレジット・ディリバティブ取引の現状を把握し,1980年代以降のマネー・センター・バンクの業務展開を考察する。これら3つの業務で,①危機から新たな業務展開が生じていたこと,②その3つの業務展開とは貸出債権のリスクを第3者に移転する途であり,これらのリスク移転が3つの業務で段階的に開けたこと,③その結果,伝統的な収益源であった金利収入から,投資銀行業務手数料と取引収益(保有期間が1年未満のポジションから得られた利益)という非金利収入への収益源の移行が起こったこと,が共通にみられた。これらは,アメリカのマネー・センター・バンクの世界的な収益力の源(マーケット・メーカーとしての役割)を説明する一助になるであろう。
キーワード:
マネー・センター・バンク,業務展開,ローン・セール,金利スワップ,クレジット・ディリバティ
目 次:
1. 対象と視角
2. 商業銀行の収益と業務展開
3. ローン・セール
(1)ローン・セールの歴史
(2)ローン・セールの動機
(3)小括
4. 金利スワップ
(1)金利スワップの歴史
(2)金利スワップの動機
(3)小括
5. クレジット・ディリバティブ
(1)クレジット・ディリバティブの現状
(2)クレジット・ディリバティブの動機
(3)小括
6. むすびにかえて