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FASB国際化戦略の意義と特徴
――FASB報告書「国際的な会計基準の設定:将来へのビジョン」 の検討を中心として


   最近、アメリカの会計基準設定主体である財務会計基準審議会(FASB)は、 「国際的な会計基準の設定:将来へのビジョン(International Accounting Standard Setting: A Vision for the Future )」と題する報告書(以下、 「FASB報告書」という)を公表した。FASB報告書は、FASBの国際化戦略の 一環として公表されたものであるが、単に国際化戦略の方向性の指針にと どまらず、FASBの命運さえも左右しかねないように思われる。なぜならば、 会計基準の国際的調和化が避けがたい現実において、FASBも、国内会計基準 設定主体としてのあり方の再検討を迫られていると考えられるからである。 これについては、FASB報告書も「社会のグローバル化の進展は、かつては ひとえに各国の権限または責任の範囲であると考えられていたことに対しても、 大きな意味をもっている。……財務報告および財務会計の基準設定も、 変革をまぬがれない。我々は、真に国際的な会計基準設定システムの出現を 目の当たりにしようとしている……」と述べている。
 翻って、FASB報告書は、日本における会計基準設定主体のあり方にも影響を 及ぼすものと思われる。周知のように、「企業会計原則」をはじめとする日本 の会計基準は、これまでアメリカの会計基準の影響を少なからず受けて形成さ れてきた。とりわけ最近では、会計基準の国際的調和化の名のもとに、FASB基 準などを反映した会計基準の設定や改訂がなされてきている のをその例として あげることができる。したがって、FASBの国際化戦略は、日本の会計基準は もとより、それを設定する企業会計審議会のあり方にも多大な影響を及ぼす ものと考えられる。
 小稿は、FASB報告書に関する検討を行ったうえで、FASB国際化戦略の意義 と特徴を明らかにすることを目的としている。


〜目次〜

T はじめに
U FASB報告書の概要
1 FASBが国際的な会計基準設定システムに参画する目的
2 将来の国際的な会計基準設定システムに関するビジョン
3 ハイ・クオリティな会計基準
4 ハイ・クオリティな会計基準設定主体
V FASB国際化戦略とFASB報告書
W FASB報告書の意義と特徴
X おわりに