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負債の公正価値測定の問題点


   会計測定において、信用リスク要素をどのように扱うかという負債固有の 問題は、企業にとって資産に関連するリスクは統制不可能であるのに対して 負債に関連するリスクのうち信用リスクだけはある程度統制可能であること などから生じると考えられ、「会計専門家の間で論争となってきた問題」で あるように思われる。この問題は、すべての金融負債を公正価値で測定する べきであるとする最近の負債測定論においては、ことさら重要な論点の1つ となっているといえよう。
 例えば、1996年7月に公表されたASBディスカッション・ペーパー「デリバ ティブその他の金融商品」は、すべての金融負債を公正価値で測定する会計 処理を提案し、その公正価値には信用リスク要素を反映させるべきではない とするものであった。これに対して、1997年3月に公表されたIASCディスカッ ション・ペーパー「金融資産および金融負債に係る会計」および昨年12月に 公表されたFASBの予備的見解「金融商品ならびに関連する資産および負債の 公正価値での報告」は、同じくすべての金融負債を公正価値で測定する会計 処理を提案しながらも、その公正価値には信用リスク要素を反映させるべき であるとするものである。
 このように、負債の公正価値測定において、信用リスク要素を反映させる 方法と反映させない方法が提案されるということは、2つの方法がいずれも 何らかの問題点をもっているからではなかろうか。小稿は、かかる問題意識 に基づいて、信用リスク要素を反映しない負債の公正価値測定と信用リスク 要素を反映する負債の公正価値測定とを比較検討しながら、負債の公正価値 測定に係る問題点を明らかにすることを目的としている。


〜目次〜

T はじめに
U 信用リスク要素を反映しない負債の公正価値測定の意義と問題点
V 信用リスク要素を反映する負債の公正価値測定の意義と問題点
W おわりに