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連結調整勘定の会計学的性格について
わが国の現行「連結財務諸表原則」において、連結調整勘定は、「親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本との相殺消去に当り、差額が生じる場合」の当該差額をいうとされている(第四、三、2)。子会社の資本には、「子会社の資産及び負債の時価による評価額と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額」が含まれるので(同二、2)、結局、連結調整勘定とは、親会社による子会社への投資額と、子会社の個別財務諸表に計上されている純資産の時価評価額の親会社持分との差額を意味することになる。本論文は、この差額のうちの借方に生じる部分、すなわち親会社による子会社への投資額が、子会社の個別財務諸表に計上されている純資産の時価評価額の親会社持分を超過する部分を議論の対象とする(したがって、以下、単に「連結調整勘定」という場合にはこの借方に生じる連結調整勘定を意味することとする)。
連結調整勘定は、「子会社の資産及び負債を時価評価した後に投資と資本の相殺消去を行うため」(「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」第二部、二、5)に、「事実上、のれんの性格を有する」(同)とされており、連結のれんともいわれる。また、連結会計を包摂する企業結合会計においては、パーチェス法を採用した際に生じる買入のれんに相当する。
連結調整勘定または連結のれんは、最近の子会社取得ではその金額がきわめて巨額になってきており、その会計学的性格を償却性資産であると考えて資産計上し償却を行う場合には、「その償却費が純利益を圧迫するところから、……会計政策ひいては政治問題にも発展しかねない側面をもっている 」とされている。最近では、連結調整勘定または連結のれんの会計学的性格について再検討を行っている会計基準設定主体も少なくないようである。
小稿は、その動向を参照しつつ、連結調整勘定の会計学的性格について理論的考察を行うことを目的としている。
〜目次〜
T はじめに
U 連結調整勘定に関する会計問題の理論的特徴
V 連結調整勘定の原因分析と会計学的性格
W 重視すべき差額発生原因の識別
X おわりに