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負債概念の再検討
――FASB諸概念ステートメント第6号改訂案の公表を契機として――


   アメリカ財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board; FASB)は、現行の財務会計諸概念に関するステートメント(Statement of Financial Accounting Concepts; SFAC)第6号において、負債を「過去の取引または事象の結果として、特定の実体が、他の実体に対して、将来、資産を譲渡しまたは用役を提供しなければならない現在の債務から生じる、発生の可能性の高い将来の経済的便益の犠牲である 」と定義している。この定義の特徴を端的にいえば、@負債は債務から生じる、A負債は発生の可能性の高い将来の経済的便益の犠牲である、という2つの規準を満たしたものが負債として認められる、ということであろう。この点は、国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board; IASB)、イギリス会計基準審議会(Accounting Standards Board; ASB)その他の会計基準設定主体が公表しているいずれの概念フレームワークにおいても同様であるように思われる。
 このような状況のもとで、昨年(2000年)10月、FASBは、公開草案「FASB諸概念ステートメント第6号の改訂 」(以下、「負債概念改訂案」という)を公表した。この公開草案は、負債と資本両方の性質をあわせもつ金融商品の開発などを背景として、SFAC第6号における負債の定義を改訂することを提案し、負債概念を再検討しようとするものであると考えられる。
 小稿は、負債概念改訂案に関する検討を行ったうえで、@債務から生じる、A発生の可能性の高い将来の経済的便益の犠牲であるという2つの特徴をもつものとして一般に認められてきた負債概念を再検討する必要があるとすれば、それはどの部分であり、そこにはどのような検討課題があるのかを明らかにすることを目的とする。



〜目次〜

T はじめに
U 負債概念改訂案の概要
V 負債概念再検討の論点
W 負債概念の再検討と意思決定有用性
X おわりに