当研究室は観測を基礎に置いて、宇宙の生い立ちや時空間の幾何学、宇宙で起きる様々な天体現象を実証的に解明していくことを目指しています。特に、2016年になってとうとう始まった重力波天文学は宇宙を観測する新しい手段となります。宇宙で起きる大爆発は周りの時空間を大きく変動させます。重力波はその時空間の響きを伝えるという形で宇宙からの音を届けてくれます。
一昔前映画ができたばかりのころ、映画はみな音の無い映像だけのサイレント映画でした。それに音が加わることで大いに表現力が増して、映画は発展していきました。天文学はまさに、サイレントな映像の時代から、重力波というサウンド付きのカラフルな時代に移ろうとしています。
今後、続々と検出される重力波信号から物理的意味を読み解いていくという、誰にとっても初めての研究が展開されます。そして2019年の後半にはLIGO、Virgoとともに日本のKAGRAが加わり、日米欧の観測ネットワークが実現し、本格的な重力波天文学がスタートします。
一方で、宇宙のより深く、遠くを狙うとともに、重力波対応天体のようなより短いタイムスケールの現象を従来の多粒子・多波長で観測する時間領域天文学(Time Domain Astronomy)が急激に進展しています。時間領域天文学では、中小口径望遠鏡が、大口径望遠鏡では成し得ない最先端のサイエンスのための観測装置として活躍します。こうした望遠鏡と重力波の観測を連携させることで、いったいどのようなサイエンスができるのか、今後楽しみです。また、建設計画中の世界最大の電波望遠鏡SKAはまさに時間領域天文学を大幅に進め、超巨大ブラックホールからの重力波の検出、さらには地球外生命すら探査することをサイエンスターゲットとしています。
このような天文学拡大の背景の中で、端山は日本の重力波望遠鏡KAGRAプロジェクトに参加し、モデル化されていない突発性重力波の探査グループのチェアとなってリードしています。また、SKA-JPの突発天体グループに参加し、電磁波観測を含めた多角的な時間領域天文学を行っています。
学生は、観測的宇宙物理の最先端である重力波について、ゼミによる理論の学習と、実際の装置を用いた精密測定実験の実施、そして観測データの解析という一連の内容を学び、独自の研究を進めるための素養を身に着けていきます。また、福岡大の持つ光学望遠鏡を用いた、天体現象の観測的研究も行っています。
他機関との研究交流や国際化も重視しています。KAGRAのミーティングへの参加や現地訪問を行うことで、さまざまな研究者や大規模研究に触れ合い、共同研究する機会がおとずれます。研究室には外国人の博士研究員が参加し、日常的に英語、他文化に触れながら研究していきます。
また、新設されたばかりでまだ実現してはおりませんが、秋には合宿形式で中間発表を行ったり、節目節目でハイキングといったリフレッシュを行いたいと思っています。