研究内容
溶融スラグの流動解析と実験
石炭を用いた次世代の発電として、石炭ガス化複合発電システム(IGCC)が注目されています。このIGCCでは溶けた石炭灰(溶融スラグ)をガス化炉の下部から速やかに排出することが重要になりますが、粘度の温度依存性が大きく異なる様々な種類の石炭での流動はよく分かっていません。そこで、最新の数値シミュレーション手法を用いて、溶融スラグの流動をシミュレーションして、ガス化炉下部の最適な形状を提案しています。
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溶融スラグの流下状態
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数値シミュレーション
さらに、溶融スラグの粘度は温度によって変わるため、この温度依存性がスラグの流動状態に及ぼす影響を調べています。また、高分子溶液を溶融スラグに見立てた模擬実験から、計算の妥当性を検討しています。
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スラグ粘度の温度依存性
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温度依存性の違いによる堰内のスラグの様子
ハニカム構造物内のガス流速分布の自動均一化
触媒や吸着剤は従来粒子形状のものが多く使用されてきましたが、近年これに代わる圧力損失の低いハニカムが注目されています。しかし、ハニカムは低圧力損失であるため、偏流が起こりやすいという欠点があり、それに起因する性能や耐久性の低下などの問題があります。本研究室では、低圧力損失であるハニカムの特長を生かしつつ、流動を均一にするための流路形状を設計する数値計算手法を開発しています。
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ハニカム吸着剤
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乱流シミュレーションによる流動均一化の一例
さらに、3Dプリンターを使って様々な形状の多孔板をハニカムの前方に設置し、圧力損失が少なく、かつ均一な流動となる形状を研究しています。
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3Dプリンタ(熱溶解積層方式)
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作成した多孔板
多孔体へ液滴が染みこむ過程の研究
サブミリオーダーの液滴が多孔体へ染みこむ現象(浸潤現象)は塗装・インクジェットプリンティングなどで見られる身近な現象ですが、液の物性が浸潤速度や深さに与える影響は必ずしも解明されていません。本研究は、液滴の浸潤を再現するシミュレーション手法を開発し、液の物性が浸潤速度や深さに与える影響を定量的に解明することを目的としています。
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球形粒子充填層上の液滴
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多孔体内での液滴の分布(シミュレーション結果)
さらに、細かい形状を作成できる光造型方式の3Dプリンターを使って四角い孔が規則的に開いた多孔体を作り、その中への浸透を観察しています。
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3Dプリンタ(光造形方式)
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作成した多孔体(孔角 500μm)
新規高速攪拌法によるウルトラファインバブル形成メカニズムの解明
ウルトラファインバブルは洗浄、殺菌、生物活性など様々な分野に応用されています。特に医療分野では超音波診断、キャビテーションを利用した癌細胞の破壊、ドラッグデリバリーシステムなどに応用されつつあり、今後も広い分野での展開が期待されています。ウルトラファインバブルの生成には様々な手法が提案されていますが、これらの生成方法の課題として、生成コストが高いことの他に、主に医療分野で用いられる高価で少量の薬剤中にウルトラファインバブルを生成する技術が未確立なことが挙げられます。本研究では、新規高速攪拌を用いたウルトラファインバブル生成法の形成メカニズムの解明と最適な攪拌条件を数値計算と実験により検討しています。
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ファインバブル形成のシミュレーション
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高速攪拌時の気液界面