重力波望遠鏡は10の-24乗のひずみでやってくる重力波を捉えることが目標であり、考え得るほとんどの物理現象による擾乱が検出を妨げる雑音源として我々の前に立ちはだかる。例えばレーザー干渉計を検出原理とした望遠鏡は、低周波の地面振動や鏡の熱雑音、レーザーの強度雑音、輻射圧雑音といった基本的な雑音から、電磁気的な擾乱、望遠鏡周辺で起きる地震、磁場変動、音響変動、天候の変動といった環境変動、通勤ラッシュ、井戸のくみ上げ、ライブといった人間活動に至るまで、様々な方面からの雑音が望遠鏡の観測データに混入してしまう。それらは望遠鏡運転を不安定にし、また偽重力波信号を出現させ、重力波検出を困難にする。
当研究室は、観測データの中のこうした森羅万象を読み解き、重力波を検出するためのシステムの構築を目指す。KAGRAを構成する各装置の状態や周辺環境雑音を把握する望遠鏡診断システムの構築や、雑音源となっている物理現象をモデリングすることで、その影響を評価・提言する研究、将来の望遠鏡の高感度化のための基礎実験研究を推進している。また、LIGO、Virgoの研究者と共同観測を行い、複数望遠鏡に相関して現れ、背景重力波検出の障害となるシューマン共振についてその影響を調べ、低減する手法の開発、またKAGRAサイトに大量に流れる地下水による重力雑音を評価しその影響の調査など行っている。
実験室からKAGRA本体まで、さまざまなスケールの実験を行う研究です。また、観測データに入るさまざまな物理現象をモデル化してその本質を捉える研究もおこないます。研究の性質上、日本のさまざまな研究者と協力したり、海外の研究者と協力したりする機会が多くなります。