福岡大学 理学部 物理科学科 端山研究室

重力波物理

重力波信号は何を語っているのか

 重力波信号には、その源を中心とした強重力場でどのようなダイナミクスが起こったのか、そのダイナミクスがそのように時間発展していったのかといった、従来の天文観測では得ることができなかった、我々にとって初めて知りうる情報が刻み込まれている。

 例えば超新星爆発をみると、シミュレーションによってわかり始めてきたそのメカニズムは、コアの重力崩壊によるコアバウンス、プロンプトコンベクション、SASI、そして非軸対称性不安定性が起こり爆発に至るというものである。この各物理ストーリーは重力波の成分として刻まれるので、波形を詳細に解析することで、現実に起こったことや、モデルの成否の実証、今まで知らなかった物理が明らかになることが期待される。

 それでは、モデル化が分からない宇宙のほとんどの高エネルギー現象や、全く未知である物理現象、天体現象についてはどうだろうか?ーーー どのように刻み込まれているのかは今のところ皆目わからないが、その中には現代物理学を次のステップに進めるための大切な情報を間違いなく含んでいる。ではどのようにしてその情報を探ればよいのだろうか?我々はあらゆるものが不明確で何を手掛かりに進んでいいのかわからない状況である。その中で暗中模索して何かを見出していくことは宇宙物理の巨大なチャレンジであり、研究の醍醐味でもある。
 当研究室では、観測データからそういった謎多き重力波を抽出し、その中に眠っている現象の記憶を読み解いていく研究を進めています。

 こうした研究は、結果から原因を明らかにする逆問題といわれる問題に分類されます。一見、意味のない雑音の集合のように見える観測結果から、アッと驚くような美しい秩序を見出すような、手品に通じる研究です。

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